スポーツ外傷

 怪我をしたときの処置の仕方によって、治癒するまでの時間が大きく変わります。
 適切な処置をして早く復帰することが自分のため、チームのためになります。
 けがの治し方についてきちんとした知識を持ちましょう。


A.スポーツ外傷総論

打撲などのケガをしてしまったら、まずRICE(ライス)

  Rest(レスト)    安静  動かさない
  Ice(アイス)    冷却  冷やす
  Compression(コンプレッション) 圧迫  押える
  Elevation(エレベーション) 挙上  高くする
 

 捻挫、打撲、肉離れなどと思われるケガは、正しく治療すると、痛みと腫れをおさえ、
治りが早く、スポーツにも早く復帰できます。

(1)安静
   ケガをしたところを無理に動かすと、ケガはひどくなります。副木、弾性包帯、テーピ
   ング、三角巾、手拭、タオルなどを用いて患部を動かないように固定してください。

(2)冷却
   痛みを軽くする、内出血を防ぐ、炎症をおさえるためには患部の冷却が必要です。
   コールド・スプレーは一時的に効果はありますが、長時間冷やすためには氷が最も適し
   ています。湿布剤は思ったほど効果はありません。受傷直後は使用しないで下さい。また、
   切傷などのあるときも使用できません。
   直接氷をケガしたところに当てると、凍傷ができます。ビニールの袋に氷を入れ、タオ
   ルでくるんで患部に当てます。
   ケガをしてから24〜48時間くらい断続的に行なって下さい。

(3)圧迫
   圧迫することによって出血と腫れを防ぐことができます。
   弾性包帯、テーピングを使用して、ケガをしたところを強く圧迫、固定します。
   圧迫すると血流が悪くなり色が白くなったり、神経も圧迫されることでしびれてきます。
   こうなったら一旦圧迫をゆるめ、約5分間くらいで色がもとに戻り、しびれがなくなって
   から再び圧迫します。冷却も同じように繰り返します。

(4)挙上
   ケガをしたところを心臓より高くしておくことにより内出血が防げ、しかも痛みが軽く
   なります。

 実際には、
 1 ビニール袋に1/2〜2/3くらい氷を入れる。
   氷が遊ばないよう空気を抜く。
 2 ケガをしたところを中心に、広めの範囲で氷を当てる。
 3 弾性包帯を氷の上から巻いて氷の固定と患部の圧迫を行なう。
   (圧迫包帯を先に巻いてから冷やす方法もある。)
 4 血行の状態をみるため時々親指などをチェックする。
 5 帰宅後も止めないで続ける。

 温泉地等で試合があったあとに多いのですが、試合直後に温泉に入ることがありますが、
これは打撲にしても、筋肉の回復にしても、患部を温めてしまうので全く勧められません。
長く熱い入浴は、内出血や腫れが増してよいことはありません。試合のあとは、軽いシャ
ワー程度にとどめましょう。

どのようなケガの場合、病院にかからないといけないのでしょうか。

<< 病院にかかるかどうかの判断 >>

 ケガをした部位が変形している場合
 RICEを行なっても、腫れがひかない、内出血がひどくなる
 切傷を伴って、それが深かったり大きい場合は、早期に病院を受診しましょう。

 外傷を受けた直後でなくても
   長く継続する痛み
   特に打撲を受けていないのにだんだん強くなる痛みがあるときは病院を受診しましょう。
       特に成長期の青少年の場合は必ず受診が必要です。

どんな病院にかかったらよいか?

 病院は一般に、打撲・骨折の場合は整形外科を受診することになります。
 切傷の縫合だけの場合は外科の病院でも構いません。
 整形外科の受診の場合は、整形外科学会認定スポーツ医名簿等を利用して下さい。
 しかしながら、試合中のケガにしても練習中のケガにしても、休日や時間外で病院が開
 いていない場合に多く遭遇します。休日・夜間の当番医が各紙新聞の案内にありますので、
 それを見て、整形外科の病院があればそちらを受診して下さい。しかしそういった病院が
 ない場合は、救急病院の受診をすることになります。その場合は、必ずしも当直の医師が
 整形外科医とは限りません。まず電話をして整形外科の診察ができるかどうか確認するこ
 とが必要でしょう。
 医事委員会では、各種大会の会場へドクターを派遣している場合もあります。
 そういった派遣されているドクターに意見を求めても構いません。

病院でもらう薬

 ケガをした時に使う薬には、
 (1)痛み止めの薬(消炎鎮痛剤)
 (2)腫れの防止に使う薬(消炎酵素剤)

 そして傷がある時には
 (3)化膿止め(抗生物質)などがあります。

 しかし、薬が全く必要のない場合も多く、例えば打撲や捻挫では、受傷直後から十分に
 RICE療法を行なえば、痛みと腫れを防ぐことができ、薬を使う必要はありません。薬
 を使う場合でも痛みが軽くなり、日常生活が楽に送れるようになれば、それ以上あまり長
 い間薬を飲む必要はありません。おおよそ4日間くらいの服用ですみます。早期に腫れを
 ひかせたり、痛みをおさえたい場合には、薬を積極的に使用する場合もあります。

(1)消炎鎮痛剤
 数多くの種類の薬があり、内服薬(口から飲む薬)、座薬(肛門に挿入する薬)、外用
 薬(貼り薬、塗り薬)などがあります。

 A 内服薬(代表的な薬:ロキソニン、ボルタレンなど)
   身体の中で効果をあげている時間や強さが薬によって違いがあるために、1日に飲
   む回数、1回に飲む量に差があります。また胃や腸を荒らさないように食後に飲むも
   のが大部分です。胃が荒れやすい人は、胃薬を併用するようにした方がよいです。処
   方の際に医師に申し出るようにしましょう。また、内服時には飲酒は禁物です。

 B 坐薬(代表的な薬:インテバン座薬など)

   飲み薬は体内に吸収されて効果がでるまで時間がかかり、また胃腸障害の副作用が
   多いので、最近坐薬を使用する場合が多くなりました。使用後すぐに腸から吸収され
   てしまうので速効性がありますが、肛門の刺激作用で便意が起こり、薬が一緒に排泄
   されてしまうことがあります。排便後に水で濡らして使うようにしましょう。
   これらの内服・坐薬は使い方によっては早期に腫れや痛みをとることもでき、翌日
   また試合のある場合など効果的に使用することも可能です。スポーツ医に御相談下さ
   い。
   また、これらを使用した場合は飲酒を控えましょう。

 C 外用薬
   皮膚を通して体内に吸収され、痛みを止めることを目的とした薬です。

   ○貼り薬
    湿布薬、パップ剤などといわれており、スポーツのケガには最も多く使われています。
   1)患部を冷やすため
   2)血流を良くしてコリや筋肉の張りを取るため
   3)痛みを取るため
    とそれぞれ異なった効果の薬があります。ケガの直後から1)の冷却の目的で貼
    り薬を使っている場合が多くみられますが、冷却効果 は氷にはかないません。まず
    患部の冷却を氷で行なった後に使用して下さい。

   ○塗り薬
    鎮痛作用、抗炎症作用、腫れを防止する作用があります。
    受傷直後に使用するよりも患部を良く冷やしたあとに補助的に使用するものです。
    筋肉の使いすぎによるスポーツ障害の場合にはよく使われており、マッサージ効果
    も期待できます。

    使用に際しては以下の注意事項を守ってください。

   ★外用薬は、キズ、擦過傷のあるケガには使用しないで下さい。外用薬は、湿疹、
    発疹(カブレ)のある場所、または外用薬によって皮膚が赤くなったり、かぶれた
    ときには使用しないで下さい。

(2)消炎酵素剤
   ケガをすると内出血による腫れ、炎症による腫れが起こり、痛みが強くなったり、回
   復も遅くなります。このためにケガをした直後には、これをおさえるための薬を使用しま
   す。多くの場合、痛み止めと腫れをおさえる薬の両方を同時に使っています。

(3)抗生物質
   すり傷、切傷など化膿が心配な場合やすでに化膿している場合に用います。この薬は
   自分の判断で飲むことを止めたり、全く飲まなかったりすると、傷の状態が悪くなったり、
   回復が長引いたりしてしまいます。必ず医師の指示通 りに飲んで下さい。
 

5)ケガに関して考えて欲しいこと
  青少年の指導者に特に注意して欲しいことは、根性を養うことと、痛みを我慢すること
  は全く別の問題であるということです。
 

6)試合直前の痛みどめの注射に関して
  試合が近づくと、痛くて困るから痛みどめの注射をうってほしいと希望する人がいます。
  これはあくまでも間違った考えだということを認識して下さい。
  痛みは人間が生きていくために必要な防御反応です。痛みがあるため、病気やケガが起
  こっていることがわかるのです。スポーツでの使いすぎ(スポーツ障害)で痛みが出るの
  は、身体がこわれていることを教えてくれているのです。ですから、痛みだけを注射で取
  ったとしても、ケガが治ったわけではありません。時には痛みを感じないため、さらに使
  いすぎてむしろ悪化させてしまうこともあります。基本的には痛みどめの注射は避けるの
  が賢明です。

青少年の継続する痛みについて

  特に成長期の子供に多いのですが、捻ったとか、打撲したことがないのに、練習をする
  と、腰、膝、スネ、足などが痛くなり、最初は我慢できる程度の痛みがだんだん強くなっ
  てきたために、スポーツが十分できなくなることがあります。1〜2週間スポーツを休む
  と痛みは楽になりますが、スポーツを再び開始すると、例えば、腰が伸びにくい、膝が曲
  げにくい、膝が痛くて階段の昇り降りも辛くなったといった状態で、日常生活動作にも痛
  みがあり不自由になってくるといった場合にはどうしたらよいでしょう。痛みの原因は、
  スポーツのしすぎによって、特に成長期の子供には多いのですが、幼弱な骨・軟骨・筋肉・
  よく治りますが、無理をしてスポーツを続けていると、大きなキズになってしまい、スポ
  ーツをやめてからも痛みや関節の動きの悪さなどで苦労することににもつながり、将来の
  スポーツ活動も制限される原因になります。成長期の青少年の指導者の方は、特にこの点
  に留意頂きたいと思います。成長の度合は子供によって異なりますので画一的で過度な練
  習は必ずこういった障害を生みます。少しでも子供が痛みを訴える場合は必ずスポーツ医
  を受診することが必要です。
  治療は、まず安静、そして練習時間、練習方法のチェック、さらにキズの治り具合に応
  じた痛みが生じない練習メニューの作成になります。痛みが治まるまで、気長に待つのが
  結局は治るのを早めます。無理をすると逆に回復は遅くなるだけでなく、症状はどんどん
  悪化していきます。この点を指導者の方が理解し、やりたがる子供をおさえるくらいの気
  持ちで指導に臨んでほしいものです。

B.サッカーによく起こるスポーツ外傷と治療(各論)

 A) 足と足首
 B) 下腿(すね)
 C) 大腿(ふともも)
 D) 膝
 E) 骨盤
 F) 腰
 このようなケガをしたときはどうしたらいいか、各々のケガについて解説します。

A)足と足首

 人間の身体を支える足は、26の骨からなります。その足の上にスネにある2つの骨(脛
骨と腓骨)があります。関節では骨と骨は靭帯で結ばれていますが、特に足は大変多くの
靭帯でしっかり守られています。しかし、足には体重の全体がかかりますし、靭帯が多い
こともあって捻挫もよく起こります。

足首の捻挫=足関節捻挫

 足首を内側に捻った場合に起こります。足首の外くるぶしの部分に痛みがあり、その部
分が腫れてきます。腫れや皮下出血がなければ、数日間で痛みが取れ、テーピング、サポ
ーター等を用いて競技に復帰できます。腫れや皮下出血がひどいようならば、受診し診察
を受けて下さい。時に、足首の外くるぶしにある靭帯(スジ)が切れていることがありま
す。

 治療は

 (1)受傷直後はRICE療法を24時間以上行なって下さい。
 (2)RICE療法後、歩行が楽にでき、腫れも軽い時には、弾性包帯、テーピングで
    スポーツ復帰ができます。
 (3)しかしRICE療法後も痛みと腫れが強い時には3週間程度のギプス固定が必要
    です。ギプスを取ったあともテーピングなどで足首を固定してスポーツ再開とな
    ります。競技への復帰は受傷後約1ヶ月かかります。靭帯が切れているものをそ
    のままにしておくと、足首の痛みが取れず、捻挫を繰り返すようになります。

アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎

 足首を捻ったり、打撲していないのにアキレス腱の部分に痛みを感じ、初めは全力疾走
やジャンプなどのときだけ痛みますが、ひどくなると普通 の歩行や階段の昇り降りでも痛
みを感じるようになります。
 治療は、まず安静にすることが基本です。ふくらはぎやアキレス腱のストレッチングや、
かかとの部分を少し高くする足底板など試みて下さい。それでも痛みがあるときは、消炎
鎮痛剤、湿布等が効果的です。ギプス固定が2〜3週間必要なこともあります。
 練習再開後は、練習前にアキレス腱のストレッチングを十分に行なって下さい。練習後
は、氷、冷水等で約15分間冷やすことが、痛みを軽くしたり、再発予防の上からも有用
です。
 治療をしないで、無理にスポーツを続けると慢性化して、なかなか治りません。時にア
キレス腱を切ったりすることがあるので、早めに適切な治療を受けることをすすめます。

中足骨疲労骨折

 繰り返して1ヶ所に無理な負担がかかると骨は折れてしまいます。これを疲労骨折とい
いますが、走る動作の多いスポーツで特に高校生に多くみられます。使いすぎ、練習のや
りすぎによって、第2、第3中足骨に発生することが多いけがです。走っているうちに足
の甲(足背部)に痛みが出てきて、我慢していると十分に走れなくなります。足の甲に腫
れが出てきて、底を押すと痛みます。痛みのためにかかとで歩くようになります。
 治療はとにかく休むことです。約4週間の安静が必要です。歩行は許可します。治療方
法として、弾性包帯による足の甲の部分の圧迫固定と足底板という足の裏の土踏まずを持
ち上げるものを使用すると、痛みが楽になります。
 痛みさえ我慢できれば問題はありません。

有痛性外脛骨

 成長期の子供に発生する場合が多く、足の甲の内側に骨の突出がみられ、ここに痛みを
訴えます。
 まず、はいている靴により足の内側が圧迫されていないか確認して下さい。圧迫がある
ようであれば、その靴はやめて、圧迫を感じない靴に替えましょう。
 次に、足底板という足の裏の土踏まず(アーチ)を支えるような敷皮を靴に入れるのが
よい方法です。
 湿布、安静などで大半は軽快しますが、何度も再発することもあります。

足底筋膜炎

 足の裏の筋・腱膜の使いすぎが原因で痛くなるケガです。
 原因としては、走りすぎですが、もとからその人のもっている足の形態(扁平足など)
により足の裏の筋・腱膜に無理な負担が加わることによって痛みを起こしやすくなってい
ることもあります。
 足の裏でかかとの部分と土踏まずのところを押すと痛み、足の指を強く反らすと、足の
裏が痛むといった症状です。
 シューズの靴底の減り具合を調べてみて、ヒールウェッジはアーチサポートなど、足の
形態により足底板の使用が有効です。受診の際には普段スポーツで使用しているシューズ
を持参してみましょう。
 基本的には走りすぎによる痛みですから、休むのが一番よい方法です。
 痛みが完全に取れるまで2〜3週間休むこと。痛みを我慢して無理をしながら走ってい
ると、頑固な慢性的な痛みが続き、稀に手術することになります。

B)下腿

・疲労骨折とシンスプリント
 (1)疲労骨折
 (2)シンスプリント=過労性脛部痛
・ふくらはぎ(腓腹筋)の肉ばなれ
・アキレス腱断裂

疲労骨折とシンスプリント

 中学性、高校生の子供に多発します。
 スネ(下腿)の痛みを訴えます。

(1)疲労骨折
   骨に繰り返しスポーツにより無理な負荷を加えると、骨折してしまうのが疲労骨折です。
   脛骨に起こる疲労骨折は、
    ・ランニングによって起こる、脛骨の上部、下部に発生する疾走型疲労骨折
    ・ジャンプによって起こる、スネの中央に発生する跳躍型疲労骨折
   の2つのタイプがあります。
   疾走型の疲労骨折は1〜2ヶ月で軽快しますが、脛骨中央に発生する跳躍型の疲労骨折
   は、なかなか治りません。スネの外側の細い骨(腓骨)にも疲労骨折が発生し、上部と下
   部が好発部位です。
   ウサギ跳び、ランニング、ジャンプの運動の繰り返しで疲労骨折が起こります。

(2)シンスプリント=過労性脛部痛
   スポーツ部活動の選手で、シーズン初期の新入部員に多く発生します。スネの内側、
   下部に起こる痛みをシンスプリントといい、レントゲン写 真では骨には異常を認めません。
   痛みが我慢できればスポーツを続けていても、1〜2ヶ月間で治ります。
   治療については下腿内側の疾走型疲労骨折とシンスプリントは治りやすく、疲労骨折は
   1〜2ヶ月間、シンスプリントは4週間くらいの安静で治ってしまいます。しかし跳躍型
   の疲労骨折は、一時スポーツを中止すると、一見良くなったようになりますが、スポーツ
   を再開すると再度骨折してきます。良い治療方法がなく、スポーツをやめてしまう選手も
   います。
   疾走型疲労骨折とシンスプリントは、痛みさえ本人が我慢できれば、スポーツを続けて
   も自然に治ってしまいますが、スポーツ医の診察は必ず受けて下さい。
   跳躍型疲労骨折はスポーツをやめるか、手術をして骨折部の骨を他の部位 の骨と入れ換
   えるかしないと治りません。そのままスポーツを続けていると、完全に折れてしまうこと
   もあります。

ふくらはぎ(腓腹筋)の肉ばなれ

  肉ばなれは、アキレス腱とふくらはぎの筋肉の移行部に生じることが多く、足首に力を
 入れて踏み込んだ瞬間にふくらはぎの筋肉がブスッと切れたような感じがします。
  直ちに冷却し、圧迫包帯を巻き、安静にします(RICE療法)。一般 に最低4週間の
 スポーツ活動の中止が必要です。
  靴にヒールウェッジ、綿花、スポンジなどを使用し、かかと部分を1〜2cm高くして、
 つま先を極端に外側にすると歩行が楽になります。
  受傷3〜4日後から入浴ができるようになります。足首の運動をゆっくり開始して下さ
 い。約3週間後から軽いランニングが可能となります。

アキレス腱断裂

  疲労がたまった時には、あまり激しい運動をしなくても断裂することがあります。ブ
 チッと音がしたように衝撃を感じますのですぐに分かります。縫合が必要ですので医師の
 診断を受けてください。

C)大腿部=ふともも

 サッカーでふとももの骨(大腿骨)の骨折はあまり起こりませんが、打撲や肉ばなれが
よく起こります。

ふとももの打撲

 サッカーでよく起こるケガでモモカンともいわれます。転倒したり、キックされたりし
た際に起こりますが、直後から打撲と内出血などによる強い痛みのために歩行も不自由と
なります。
 ケガをした直後からRICE療法を確実に行なうことが必要です。その後は、安静にし
て下さい。指圧、マッサージ、鍼などは絶対にしないことです。間違っても温泉などに入
ってはいけません。そして、痛みを我慢して無理に膝を曲げないこと。自然に治るのを待
つことです。2〜3週間して痛みが取れてきたら、温熱療法、軽いストレッチングを開始
して下さい。打撲の程度にもよりますが、4〜6週間くらいの治療を必要とします。
 初期のRICE療法が行なわれなかったり、早期にマッサージをしたり、早すぎる運動
復帰をすると、柔らかい筋肉が骨に変化する場合があります。これを「化骨性筋炎」とい
って、スポーツ復帰に6ヶ月くらいを要しますので初期の治療が大事です。

ハムストリングスの肉ばなれ

 肉ばなれは瞬間的に筋・筋膜が伸ばされて筋・筋膜の一部分が切れてしまった状態をい
います。高校、大学、社会人に多いケガです。
 肉ばなれがよく発生する部位は、ふとももの後面 、内側上部とふくらはぎの内側上部で
す。停止している状態から全力疾走に移るときによく発生します。ふとももの後ろにあっ
て、膝を曲げる働きのある筋肉をハムストリングスといい、この筋肉を瞬間的に収縮させ
ようとしたときに、筋・筋膜の一部が切れてしまうケガです。膝を曲げようとすると痛ん
で、ふとももの後方内側上部を押さえると痛みます。ランニングは不可能となります。
 急性期は、やはりRICE療法を行ないます。
 筋肉の断裂、出血の程度によって治療期間が異なります。
 軽度のものはRICE療法のあと2〜3日後から患部の温湿布を行ない、1週間くらい
でジョギング可能となります。その後ストレッチや筋力強化を1〜2週間行ない競技に復
帰します。
 筋肉が大きく切れたときには、痛み、腫脹が強く、1〜4週間はスポーツ不能です。急
性期に十分な安静と固定を行なわないと、再び肉ばなれを起こすこともあります。
 いずれの場合も、急性期に十分な治療をしないで急に以前のようにスポーツを再開する
と、稀に再発を繰り返すことがあります。。

D)膝

 サッカー選手にとって走る、蹴る、跳ぶなど動きに関わる膝は大事です。
 膝は、構造的には、ふとももの骨、大腿骨とスネの骨、脛骨の間を結ぶところで、その
間にはクッションの役割を果たす、外側と内側の2つに分かれた軟骨である半月板があり
ます。
 また膝の内側、外側にはそれぞれ靭帯があり、膝の中には十字にクロスしている靭帯が
あります。これらの靭帯は、膝が前後左右に動きすぎないよう守っています。
 膝のケガは、放置せずスポーツ医を受診し、しっかりとした治療を受けて下さい。

1)内側側副靭帯損傷
2)前十字靭帯損傷
3)半月板損傷
4)オスグッド病
5)使いすぎによって起こる膝の痛み

内側側副靭帯損傷

 タックルをされた時など膝が内側にXの字になるような強い外力が加わった時にケガが
起こります。この靭帯は膝の安定に大変重要なものです。この靭帯を切った時の症状は、
膝の内側に強い痛みがあり、歩くと膝に力が入らない感じがして、膝の不安定感などが出
てきます。
 大変大切な靭帯ですが、手術をしなくてもほぼ完全に治ります。筋力訓練のみで殆どの
場合治癒します。重症の場合、装具や4週間程度のギプス固定が必要となったり、靭帯が
関節の中に入り込むように切れてしまった場合は手術が必要になることもあります。
 膝の不安定な状態により、半月板や関節軟骨にキズがつき、歩行、正座、階段の昇り降
りで痛みが出ることがあります。

前十字靭帯損傷

 中学生・高校生の女子に多いケガですがサッカー選手でも多くみられます。接触やジャ
ンプの際に、膝を捻ったときに、膝の中にある前十字靭帯が切れてしまうケガです。また
自分の筋肉の力によって、接触がない状態でも切れてしまうこともあります。
 前十字靭帯が切れた時には、何か切れたような音を感じます。直後から歩行不能か、や
っと歩けるといった状態です。早期に正確な診断をつけるために、関節鏡(関節内を直接
見る内視鏡)が必要です。前十字靭帯が切れている場合、手術が必要です。安静にして痛
みが取れても前十字靭帯が切れたままですと、膝がガクガクして方向転換、サイドステッ
プなどのスポーツ動作がうまくできなくなります。このために、半月板(関節軟骨)など
にキズがつくことにもつながります。ケガをしてから長い時間がたった場合は、そのまま
手術してもくっつかないことがあり、筋膜移植、時に人工靭帯を用いて前十字靭帯を作り
直す手術が必要になることがあります。いずれにしてもスポーツ復帰には6ヶ月〜1年程
度を要します。
 この靭帯の損傷はスポーツのケガの中で特に注意を要するものです。膝のケガをした際
は放置しないでスポーツ医を受診することをすすめます。

半月板損傷

 膝のケガのなかで比較的多いケガです。半月板にキズがつくときには、半月板だけの場
合と、靭帯損傷と合併する場合があります。いずれにしても自然に治ることはありません。

(1)半月板だけのケガ(単独損傷)
   膝に捻りの生じた際に起こります。何かはさまった感じで膝が伸びにくくなったり、
   水がたまったりといった症状が出ます。人によっては数年間も症状がなく、しばらくし
   てから痛みの出ることもあります。

(2)前十字靭帯損傷に合併した半月板のケガ(複合損傷)
   前十字靭帯が切れたときに、一緒に半月板にキズがついた場合、亀裂が大きくなること
   が多く、痛みが強く起こります。
   治療は、関節鏡を行なって、キズが新しい場合、キズは縫うとくっつきますので、半月
   板のキズついた部位を縫合することも可能です。しかし、時間がたっているものが痛み出
   したということもあり、その場合は縫合してもくっつきませんので手術が必要になります。
   キズついたところだけを切り取る「部分切除」が行なわれることがあります。
   手術後約1ヶ月間くらいで、ジョギングが開始できるようになります。前十字靭帯がキ
   ズついている場合は、あわせて靭帯の縫合、再建術が必要になります。

オスグッド病

 10歳前半の子供に多くみられます。発育期の子供にみられる特有のスポーツ障害です。
この年齢の子供の骨は発育期にあって、未だ幼弱なために、スネの骨の上の部分に膝関節
を伸ばすふとももの筋肉の末端である膝蓋靭帯がついています。繰り返し膝を曲げ伸ばし
することで、きたえられた膝を伸ばすスジの力が幼弱な骨より強いため、骨が剥離してき
て膝の下が痛みます。この部分の骨が隆起してくることもあります。運動内容の問診、レ
ントゲン写真により診断は楽にできます。
 子供の痛みが強いときには、2〜3ヶ月間スポーツを一時中止するだけで、痛みは楽に
なります。また痛みが我慢できる程度でしたら、ふとももの筋肉のストレッチング、練習
後のアイシングがよい方法です。
 痛みさえ我慢できれば、スポーツを続けても問題ありません。痛みが強ければ2〜4ヶ
月間の安静により、キズのついた骨が治ってしまい、またスポーツが可能となり、将来後
遺症の心配はありません。
 小・中学生で2ヶ月も3ヶ月も練習を休めないという子が多くみられますが、この時期
は思い切って練習を休むことが結局はあとあとのためになります。休む勇気も必要です。

使いすぎによって起こる膝の痛み

(1)外側の痛み(腸脛靭帯炎)
   ランニング主体の練習のしすぎからくる痛みです。特にシーズン開始時に痛みが
   出てきます。特に下り坂のランニングでは痛みが増します。O脚の選手に多いのが
   特徴です。

(2)お皿の下端の痛み(膝蓋靭帯炎)
   ジャンパー膝ともいわれており、サッカー選手にも多発します。練習開始時に痛
   く、暖まってくると痛みが軽くなる特徴があります。
 

(3)お皿の周囲、裏側の痛み(膝蓋軟骨軟化症、膝蓋骨亜脱臼)
   お皿を上から強く押すと、痛がったり、ゴリゴリ音がしたりします。完全に治る
   まで時間がかかります。

(4)お皿の内側の痛み(タナ障害)
   お皿の周囲の痛みでも、内側だけに痛みがあるケガとして、タナ障害が考えられ
   ます。関節の中にある正常な膜(タナ)が、スポーツのやりすぎで関節にはさまっ
   て起こる痛みです。頑固な痛みが続くときには、関節鏡を使って手術をして、タナ
   を切除することがあります。

(5)内側の痛み(鵞足炎)
   膝の内側の起こる痛みを鵞足炎といっています。鵞足とは、ふとももの後ろの筋
   肉(ハムストリングス)の腱がちょうど鵞鳥の足のように膝の内側につくので、こ
   の部位を鵞足といい、この腱を使いすぎて起こる痛みを鵞足炎といっています。ラ
   ンニングのやりすぎで起こります。
   内側のヒールウェッジを用いたり、ランニングの量 を減らし、運動終了後アイス
   マッサージをしてみましょう。
   いずれも練習直後のアイスマッサージ(約15分間)が効果 的です。スポーツの現場に
   は、常日頃より氷を用意しておくのが理想です。
   多少運動に不自由を感じる場合、痛みの原因調査が大切です。ランニング量 をはじめと
   してメニューを考え直しましょう。1〜2週間の安静が必要です。
   ひどい痛みがあるときは、足、膝の形(アライメント)をスポーツ医にチェックしても
   らって下さい。必要に応じてサポーター、足底板を作ってもらうことも一つの解決策です。
   痛みが取れるまで、筋力トレーニング、患部外トレーニングなどを行なって下さい。必ず
   痛みは取れます。
   膝の痛みは、痛みを我慢しているうちに治ってしまう場合と、痛みのために競技ができ
   なくなる場合とがあります。スポーツ医に相談して、膝、足の形態異常をチェックして装
   具をつけるのがよい方法です。

E)骨盤

 骨盤は7つの骨からなり、腸や膀胱などを保護しているほか、背骨を支える筋肉、腹筋、
お尻や股関節の筋肉、ふとももの筋肉がついているところなのです。

上前腸骨棘、下前腸骨棘、裂離骨折

 成長期の子供に瞬間的に発生する特有なケガです。上前腸骨棘は、骨盤の骨で腰の横の
前方の骨が出っ張っているところです。膝や股を曲げたり、ふとももを外に回す筋肉がつ
いているところです。下前腸骨棘はそれより少し下方にある骨の出っ張りで、この部分に
股を曲げる筋肉がついています。成長期ではまだ骨は幼若で、筋肉の強い収縮が起こると
はがれて剥離骨折を起こすことがあります。成長期の選手が、ランニングや短距離疾走、
ジャンプ、ボールを蹴ったあとなどに股の付け根に強い痛みを訴え歩けなくなったら、こ
の骨折を疑って下さい。
 痛みが強く歩行が困難ですから、現場での処置は、股を曲げ、局所にアイシングを行な
います。骨折のズレの程度により、手術の必要な場合があるので、スポーツ医によるレン
トゲン写真での診断が必要です。骨折のズレの程度が軽ければ、股の関節を曲げた位 置で
3週間の安静を保つだけで治ってしまいます。手術の必要はほとんどありませんが、ズレ
が大きい場合は、稀に手術によりスクリューで固定を行なうこともあります。骨折部は約
4週間で治ってしまいます。スポーツへの復帰はレントゲン写 真で骨折が完全に治ってか
ら徐々に行ないます。

恥骨結合織炎

  最近ではジュビロの中山選手がこれで1年間プレーできませんでした。ストライカー
に多くみられます。ひどくなると手術が必要になる場合もあります。
  先日のサッカードクターセミナーではクラミジアという性行為感染症でもみられると
いった話もでていました。原因不明で痛みのとれない場合、そういった方面 での治療も必
要になってくるかも知れません。

F)腰部

 腰を支えているのは筋肉です。腰部のケガの予防には、腹筋、背筋の強化が非常に大事
になります。

腰痛症

 一般に腰部捻挫、筋・筋膜性腰痛などといったものを指します。不用意に腰を捻ったり
したときに起こります。長時間の中腰の姿勢でも起こりやすくなります。腰の関節の捻挫
であったり、腰背部の筋肉の肉ばなれだったりします。症状は、急激に腰が痛みます。痛
みのため腰を前に曲げることができなくなることもあります。腰背部の筋肉が緊張して硬
く触れ、押すと痛みがあります。急性期は横になって安静を保つのが一番です。局所湿布、
鎮痛剤の服用等の治療により、1〜2週間で軽快します。両足を布団の上に乗せて寝たり、
膝を曲げて横に寝る姿勢を取りましょう。長時間の同一姿勢、中腰、アグラなどを避け、
痛みが取れてから腰背部と腹筋の強化を行ない、スポーツに復帰して下さい。腰背部と腹
筋の強化は腰痛の予防にもなります。
 放置したまま無理をしてスポーツを続けていると、足に痛みやシビレが走ったりします。
あお向けに寝て膝を伸ばしたまま足を上げると、ふとももからふくらはぎに痛みが走るよ
うな症状がある場合は、腰部椎間板ヘルニアが疑われますので病院で診察を受けて下さい。
 腰痛だけの場合は、安静で治ってしまいますが、痛みが繰り返し起こる場合、椎間板ヘ
ルニア、腰椎分離症が進行している場合などがありますので、用心が必要です。